Ceysson & Bénétière Tokyo では、新スペースで2回目となる展示を9月から開催いたします。『アルゴリズムと偶然』をテーマとしたこの展示では、アートがアートである根拠を60年以上問い続けてきたBernar Venet(ベルナール・ヴネ)が、さらなる追求を重ねて創作した近年の未発表作品を迎えます。
Venetが絵画や木製レリーフ、鋼鉄の彫刻を通して1976年から取り組んできた「Angle」というフォルムが、生成プロセスを通して新たな絵画として生まれ変わりました。Venetは「このようなフォルムにデジタル体験をさせることで、常に問い続けるという私の信条も新たなステップを踏み出すことになる」と説明しています。プログラマーの協力を得て、アルゴリズムがもたらす可能性を追求しつつ、予測不能でありながら厳しく構築された作品になっています。
こうしたITとの関わりは、Venetの往来の手法の延長線上にあります。60年代からすでにVenetは、同じ内容を違う媒体で伝えるというアートにおける「等価原理」を実践していました。ある一つの原動力を元に、絵画、彫刻、パフォーマンス、音、そしてテキストと展開するのです。デジタルの活用は、Venetの一貫した姿勢を現在のテクノロジーに当てはめたのにすぎません。
Venetは「生成アートは私にとって新しい実験場だ」と言います。そこに自由とランダム性、そしてエントロピーという、あるシステムにおける無秩序の度合いを測る物理学の概念を見出し、創作の源に転化しているのです。こうしたアイディアは、「Tas de charbon」や「Accidents」といった作品群や、また1970年にMoMA で開催された展覧会「Information」で公開された作品でも、既に中心的な位置を占めていました。それによって、固定されずに進展していく、常に開かれた作品となるのです。
様式を拒むことを信条としてきたVenet は、一貫してフォルムにおける文脈や内容の重要さを主張してきました。近年の作品群もこうした初源的な姿勢に添うもので、生成し進化していく、まさに現代的な活力を作品にもたらしています。
Bernar Venet
1941年、フランスのシャトー・アルヌー生まれ。パリと南仏ル・ミュイで活動。ポンピドゥーセンターやMoMA 、グッゲンハイムなど世界有数の美術館に作品が展示され、コンセプチュアルアートおよびミニマルアートの歴史に名を刻んでいる。世界各国の公共の場に設置された壮大な彫刻でもよく知られる。




















