Tania Mouraud

「蝶になる夢を見ながら」
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Presentation

現実はほのかに姿を見せながら、たちまちその手をすり抜けてゆく。おそらくそのために、すなわちそれを掌中に収めようと絶えず試みるために、タニア・ムーローの芸術は休むことなく変容し続けているのだろう。

セソン&ベネティエールは、2026年2月5日から3月21日までパリのスペースにて、近年アカデミー会員に選出された作家タニア・ムーローに捧げる展覧会を開催できることを大いに喜ばしく思う。本展では、80年代の銀塩写真シリーズから2024年制作のPASIKまで、膨大な時間を横断する歴史的作品と稀少な作品群を紹介し、都市と自然のあいだを彷徨いながら展開されてきた、兆候や断絶、緊張に耳を澄ませる思考の軌跡を辿る。

1981年、ミシュランガイドを手に、ムーローはグラン・ブールヴァールを歩き回る(《Vitrines》)。そこでは、すべての店が the place to be、いや、むしろ the place to buy である。彼女はアジェの眼差しを継ぐかのように、人々が贈り、また自らに贈るための品々を捉え、光を完璧に操りながら瞬時にシャッターを切った。欲望の対象であるこれらの品々は、車内を親密な空間へと変える《Rétrovisées》(1984)の車に吊るされた小物たちと呼応する。

こうして「通りすがり」に捕捉された現実に対し、精巧なフィギュアを用いて日常の風景を再編する《Images fabriquées》(1981)が応答する。小さな舞台の中で、幼年期の記憶がふと滲み出る。思い出されるのは、2025年11月、美術アカデミーでの作家スピーチの結びの言葉──創造とは遊びである、という宣言だ。子どもがレゴを組み立てて独自の世界をつくるように、ムーローはほとんど何もないところから物語を紡ぐ。それはしかし、地平は果てしなく、課される労働は終わりなきものに見える《2000 ans de ménage》や、タイヤのリムに映り込む《L’Indienne》の像が先住民族の行方を問うように、広く政治的問いをも孕んでいる。

日常の変容は《Borderland》(2007–2025)の風景へと連なり、飼料を包むサイレージ用プラスチックの表面に反射して生まれる像の中に世界は屈折し、抽象化する。それは保護すると同時に汚染する素材であり、作品自体も写真と絵画の境界を曖昧にする。一方、《Haïkus》(2017)は、版画の母型のようなイメージを喚起し、負の空間が風景を部分的に消し去ったかのように見える。

ムーローにとって写真から文字への距離は限りなく近い。スケールの転換は《Where is the unknown》(1973)に反響し、わらべ歌のようなリズムを持つ円形イメージは、言語の恣意性と欠落、そして現実を捉えきれない不可能性を問いかける。細部から宇宙の構造へと円環は広がり、既知のものは揺らぎ、繰り返し組み替えられる。また、2023年にマルヴァル=リュー・ヴィスコンティから刊行された《Carnets d’atelier》の一葉を壁に展示することで、ページは建築的スケールへと拡張され、絡み合う文字からなる《PASIK》(2024)では詩が風景となり編み上げられていく。言葉は物語を手放し、途切れた息へと変わる。

こうして《En rêvant d’être un papillon》(蝶であることを夢見ながら)は、ドキュメントとフィクション、明澄と曖昧、可読と可視、微小と宇宙的スケールのあいだに横溢する無数の移行点を私たちに示す。媒介を渡り歩きながら現実の断片を掬い取るムーローの作品は、あらゆるイメージが変態の瞬間であること──自己と世界のあわいに羽ばたく一拍であることを思い出させる。

セシル・ルヌー、2025年

Featured Artworks
Where is the unknown, E390 - 1971-73
Where is the unknown, E390 - 1971-73
1971 - 1973
160.6 x 160.6 cm / 63.2 x 63.2 in
Visitor information

Location

Ceysson & Bénétière Paris

23 rue du Renard
75004 Paris

+ 33 1 42 77 08 22

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Opening Hours

月曜日: 休み
火曜日: 11:00 - 19:00
水曜日: 11:00 - 19:00
木曜日: 11:00 - 19:00
金曜日: 11:00 - 19:00
土曜日: 11:00 - 19:00
日曜日: 休み

Exhibition Dates

2026年2月5日 - 2026年3月21日

Opening reception

2026年2月5日 17:56