2026年10月20日から11月28日まで、Ceysson & Bénétière Parisでは、ナム・チュンモ(Nam Tchun-Mo)の近作約10点を紹介する展覧会を開催いたします。
ナム・チュンモの制作における中心的な造形要素は「線」です。彼の線は、単なる輪郭や抽象的なジェスチャーにとどまるものではなく、煙草畑に刻まれた畝の記憶、中国漢字の「井」、そして格子窓や梁といった韓国伝統建築の要素を内包しています。その線は、自らの反復とリズムによって時間性を宿すと同時に、画面の中に空間性と視覚的秩序を生み出しています。
こうした線の特性は、ナム・チュンモ作品の「感覚的構造」を形成しています。線・色彩・テクスチャーといった造形要素が有機的に組み合わされることで、鑑賞者の視覚を喚起し、独自の美的体験をもたらします。彼の線は単なる視覚表現を超え、自律的なリズムと空間性を生成し、時間と物質、記憶と感覚が交錯する複雑な世界へと鑑賞者を導きます。また、反復的に線を積み重ねる制作行為は、時間の経過をキャンバスの表面に物理的に刻み込み、それぞれの作品を人生の軌跡を記録する感覚の地層へと変容させています。
ナム・チュンモの絵画は、韓国単色画(Dansaekhwa)にしばしば結び付けられる「無為(むい)」の実践ではなく、「有為(ゆうい)」の実践として理解することができます。単色画が「何もしないこと」や「空(くう)」の美学として語られることが多い一方で、ナム・チュンモは反復と構築のプロセスを通じて、「行為」の実践を提示しています。彼は工業用合成素材であるポリコート(polycoat)を用いることで、伝統絵画の表現方法と美的価値を積極的に再解釈しています。伝統の外面的な造形を模倣するのではなく、梁、瓦、門、格子窓といった韓国伝統建築の構造的要素を現代化するとともに、「井」という文字がもつ空間的象徴性を抽象絵画の言語へと翻訳しています。こうして彼は、伝統が備える構造的思考と感性を現代において新たに活性化し、再生させているのです。
出典:Bae Wonjung『Nam Tchun-Mo: A Well That Never Dries』、2026年。
